すでに老後生活を不安なく送れるお金を持っている。
だから年金が減ることを承知で繰り上げ受給して『60歳から遊びまくる』こんな考え方があるようです。
しかし、本当にお金に余裕があるのなら『繰り下げ受給の方が若いうちに娯楽費を使える』ことをご存じでしょうか。
今回は『人生を楽しむためという理由』で繰り上げ受給を検討している方の致命的な勘違いについて解説します。
年金を安易に繰上げ受給すると人生の破滅に直結しますので、ぜひ熟考のうえ決断してください。
なお「私は娯楽費にお金を回すほど余裕ないぞ」という方は↓↓↓の記事を参考にして下さい。
労働と貯蓄と年金をバランスよく組み込んだ、厚生労働省が推奨の老後プランです。
- 繰上げ受給:年金が最大24%減
- 割に合わない年金をお小遣いにする生活
- 自分の資産を使った後、繰り下げ受給
- 本当に遊びたいなら、もっと早くから遊べ
- WPP理論:厚生労働省は繰り下げ受給を推奨
- 年金繰上げのよくある勘違い
- まとめ:お金があるから繰上げ受給は愚行
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繰上げ受給:年金が最大24%減
年金は最速で60歳から受け取ることができます。
ただ、早く受け取る以上、もちろん全額を受け取ることはできません。65歳時に受け取る年金を基準に減額されます。
60歳0ヶ月の24.0%は『65歳の時に受け取れる年金のマイナス24%』という意味です。
年金を早くから受け取る代償として、死ぬま減額された年金が続くのが繰上げ受給です。
割に合わない年金をお小遣いにする生活
仮に以下の条件の人が60歳で退職し年金をお小遣いとして使うとどうなるか見てみましょう。
(注:分かりやすくするため、年金の受給や資産売却時の税金や社会保険料は考慮していません)
- 60歳で退職
- 保有資産:3,000万円
- 生活費:月20万円(年240万円)
- 65歳時の年金:月15万円(年180万円)
計算上は資産3,000万円で繰上げ受給でも生活できる?
年金を60歳で受け取ると24%減額されます。
これを65歳までお小遣いとして使うとなると、5年分の生活費(年240万円)を資産から取り崩す必要がありますね。
3,000万円を年利5%で運用しながら年240万円を年初に取り崩すと、65歳時点で資産は2,450万円ほどになりますから、この時点での状況は
- 資産:2,450万円
- 生活費:月20万円(年240万円)
- 年金(24%減):月11万4千円(年136万8千円)
生活費が年間103万2千円足りませんから、これを資産収入で賄わないといけないですね。
『2,450万円を5%運用でいけるじゃん🤣』と思われましたか?
しかし残念ながら世の中そんなに甘くありません。
暴落が来たら終わる(泣)
「インデックス投資は長期投資だから暴落は気にするな」は投資初心者さんによく使われるアドバイスです。
しかし、これが当てはまるのは資産を貯めている段階の人だけです。すでに取り崩し段階の人には当てはまりません。
リーマンショック時のS&P500(円建て)は50%を超える暴落でした。
これが65歳で来たらどうなるでしょう。
2,450万円のうち2,000万円を投資に回しているとしたら資産は1,450万円・・・
5%運用で生活費の差額8万6千円を取崩す計算だと22年で資金が底をつきます。
さらに悲惨なのは60歳で年金の繰上げ受給を申請した直後に暴落が来た場合😭
3,000万円あった資産が大きく減りますから、年金でお小遣いどころではないでしょう。
もちろん働けば何とかなります。
しかし、何歳まで働けばいいか予測できません。
減った年金は一生続くのですから、株価が持ち直したとしても、常に株価暴落におびえる老後生活になってしまいますね。
暴落が来ると立て直すのが困難
老後の取崩し期間に入った後の暴落は、資産に大きなダメージを与え回復が困難になります。
このリスクについて分かりやすく解説している本がありますので、取り崩しプランの確認と合わせてぜひ読んでみてください。↓↓↓
とはいえ、そもそもこんなリスクをとらずに娯楽費を使えるのが年金の繰り下げ受給なんです。
自分の資産を使った後、繰り下げ受給
資産3,000万円で年金を繰上げ受給せず月11万4千円(年136万8千円)の娯楽費を得ることはできるのでしょうか?
これは生活費と年金受給額から逆算すれば分かります。
月の生活費が20万円ですから、少し余裕をもって15万円の年金が+42%(21万3千円)になる70歳でプランを立ててみましょう。
60歳から5年間を年376万8千円(娯楽費136万8千円と生活費240万円)取り崩し
65歳から5年間は年240万円(生活費)を取り崩すプランです。
年5%運用しながら取り崩すとして
- 65歳時点の資産残高:1,650万円
- 70歳時点の資産残高:710万円
- 生活費:月20万円(年240万円)
- 年金(42%増):月21万3千円(年255万6千円)
60歳からの5年間で使っている娯楽費は同じで、70歳からは生活費を超える年金を受け取り続けることができます。
さらに700万円越の自由に使えるお金も残っていますから安泰ですね。
早期に暴落が来ても何とかなる
なお、こちらの繰り下げプランも途中で暴落がくるかもしれません。
しかし、年金はまだ受給していませんから、取り崩し資産が足りなくなったとしても『70歳まで働く』というゴールが見えています。
見えないゴールにおびえ続ける繰上げ受給より、遥かに安心した老後を送ることができますね。
本当に遊びたいなら、もっと早くから遊べ
「70歳まで何とかすればいい」というのは、なにも暴落後のセカンドプランだけではありません。
極端な話、50歳時点で70歳まで年金に頼らず生活できる目途がたてば、新たに老後資金の貯蓄は必要ありません。
給料から生活費を引いて、残った全てを娯楽費にできるのです。
例えば50歳時点で3,000万円の資産があれば
- 50代:給与から生活費を払って、残りを全て娯楽費に
- 60歳~70歳:働くも資産の取り崩しで生活するも自由
- 70歳以降:繰り下げた年金で生活する
こちらの方が年金を繰上げ受給するよりも、心が安らかな老後を送れると思いませんか?
WPP理論:厚生労働省は繰り下げ受給を推奨
なお、厚生労働省は労働と繰り下げ受給を組み合わせたWPP理論を推奨しています。
労働収入・自分で準備した老後資金・公的年金をバランスよく順番に使って、何歳まで長生きしても安定した老後生活を送れるようにするプランです。
そのため年金受給の申請をする前でないと実行できません。
ぜひ、現役時代からこの老後プランをチェックしてみてください。
↓↓↓
年金繰上げのよくある勘違い
最後に巷にあふれる年金の繰上げ受給に関する勘違いを払拭していただきましょう。
❶:繰上げると税金や社会保険料が安くなってお得だ!
大切なのは手元にいくらお金が残るかです。
勤め先で社長が『来月から給料上げます』と言ったとして、あなたは『社保と税金が上がるんで上げないでください』なんて言いませんよね。
住民税非課税世帯との分岐点を超えれば、手取りが減る場合がありますが、その少ない年金では繰上げ受給どころではありません。
今回の記事は分かりやすさを優先するため税金や社保を考慮していませんが、実際の受給時期を決める時は必ずチェックして下さい。
とはいえ非常に難しい計算なので、お金を払ってプロのフィナンシャルプランナーに相談することをオススメします。
相談料は1回5千円~2万円が相場のようですので、老後の娯楽費に悩んでいる方なら十分支払える金額でしょう。
❷:年金が改悪されるから早くもらった方がいい
繰上げ受給して受け取る年金額は65歳時点を基準に減額されますから、改悪されて受給額が減れば、当然、繰上げてもらっている年金も減ります。
早くもらっていて得するどころか、更に厳しい生活になるでしょう。
❸:計算したら〇歳から受給するのが一番儲かるぞ
厚生年金の正式名称は厚生年金保険です。つまり年金は老後に働けなくなった時に備える保険です。
仮に「平均余命を考えると〇歳に受け取るのがベスト」という情報を信じて受給年齢を決めてしまうと、長生きした時に生活が破綻しますよ。
損得ではなく老後をお金の心配なく暮らせるかを重視してください。
❹:医療費で生活費が増えるかもしれないじゃないか!
老後の生活費は逆に下がります。
65歳の生活費を基準にプランを組めば心配ないと思います。
それに生活費が上がることを予想しているのなら、繰上げ受給なんかしている余裕はありませんよ。
まとめ:お金があるから繰上げ受給は愚行
お金に余裕があるからといって年金を繰上げ受給することは、将来の生活を危うくする選択ですので賢明ではありません。
以下が主な理由です:
市場暴落のリスク
- 早期の暴落で資産が大きく目減りすると回復が困難
- 減額された年金は一生続くため、常に不安定な状態に
より良い選択肢が他にある
- 娯楽費は保有資産から捻出すればいい
年金受給額が生活費を上回る年齢まで生活できる目途がたてば、生活費以外がお小遣いです。
老後の心配がいらないくらいの資産を既に持っているなら、わざわざ60歳を待って繰り上げた年金に頼らずとも、もっと若いうちから娯楽にお金を使ってはいかがでしょう。
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