デメリットばかりQYLDの高配当に潜むリスクを画像で解説。
「配当利回が高くて、安定している様に見える」事で有名な米国ETF『QYLD』が東証にも上場されましたね。
その名も『グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF(2865)』
ナスダックの名前が入った高配当ETFという事で、気になっている方も多いんじゃないでしょうか。
しかし、投資信託やETF投資でサイドFIREを達成した私としては、絶対にナシなETFです。
有名インフルエンサーが、「QYLDでFIREできる」と書籍を出していようともナシです。
その理由は、ETFの仕組みが
上昇しないけど、すぐに下落する
という物だからです。
この記事では以下のような、QYLDの特徴や良くある勘違いを、画像付きで解説しています。
- 安定しているのは配当金額ではなく利回り。
- そもそもナスダック投資ではない。
- 普通のナスダック投信の方が好成績。
- 通常、株価が右肩下がり。
理解していないETFに、ノリと勢いと勘違いで投資しては、大切なお金を証券会社に寄付している様なものです。
QYLDの仕組みが良く分からないまま、勘違いして買っている皆さん、大切なお金を守るため、ぜひこの記事を役立てて下さい。
注:本来、株式は(株価・配当金)、ETFは(基準価格・分配金)ですが、解説しやすくするため、この記事では全て株価・配当金と書かせて頂きます。
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- デメリットばかりQYLDの高配当に潜むリスクを画像で解説。
- 年利10%の高配当利回りだが、配当金額は下落
- QYLDはナスダック投資ではない。
- ナスダックの方が実質的に高配当になる
- QYLDの配当原資は
- カバードコール戦略の仕組み。
- 最大のデメリット:QYLDは簡単に下がり、上がり辛い
- QYLDのデメリットを再確認:高利回りに惑わされないで。
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年利10%の高配当利回りだが、配当金額は下落
上のグラフはQYLDの配当金状況です。
黄色線の配当利回りは約12%で安定しているのに対し、配当金額は下がっていますね。
昨年10月の配当金が19.67ドルで今年10月は16.26ドルですから、配当金額は約17%減です。
配当金額が減っても、同時にQYLDの株価も下落した為、配当利回りは高いまま維持されるんですね。
もし、QYLDに投資を検討している理由が「安定して高利回りの配当金が受け取れるから」なら、それは見当違いです。
あなたが欲しいのは高い利回りではなく、高い配当金ですよね。
QYLDはナスダック投資ではない。
高配当株ETFで有名なSPYDやHDVは投資先の株式から受取った配当金から、ETFの配当金を支払いますが、QYLDはナスダックに投資する投資家に保険を売った保険料から配当金を出しています。
???ですよね。
この保険料(コール・オプション)については記事の中程から、詳しく解説しますので、ここではとりあえず。
QYLDはナスダックに投資するETFではない。
という事だけ理解して下さい。
ナスダックの上昇に期待してQYLDを買うのは、お門違いなんですね。
ナスダックの方が実質的に高配当になる
QYLDを持っている人に、投資している理由を尋ねれば「ナスダックに投資して沢山の配当金を貰えるから」と答える人が殆んどでしょう。
しかし、上のグラフはナスダックとQYLDを比較したものですが、QYLDは税金が引かれる前の配当金を全額再投資しても、ナスダックに完敗していますね。
そもそもナスダック投資じゃ無いですし。
もしも、投資前にこのグラフを見たら、QYLDに投資する人はいないと断言できますよ。
ナスダック投資で現金が受取れる
無理やりにでもQYLDに有利な点を挙げるとしたら、毎月配当金が口座に振込まれる事くらいでしょうが、それも一手間掛ければナスダックでも同じ効果が得られます。
それは、楽天証券が提供する投資信託の定期売却サービスを利用する事です。
定期売却サービスは読んで字のごとく、保有している投資信託を定期的に一部売却をしてくれるサービスで、仮に毎月0.83%売却の設定をすれば、実質『年利10%の毎月分配ナスダック投資信託』が完成します。
もはやQYLDに投資する理由は、「変わった米国ETFを保有してみたい」以外に思い付きません。
趣味で米国ETFを買っているので無ければ、即刻全売却して、楽天証券に口座を作って、『eMAXIS NASDAQ 100』等の投資信託に乗り換えてしまいましょう。
定率で定期売却サービスを利用できるのは楽天証券だけです。
QYLDの配当原資は
ここからは、QYLDがどの様な手法で運用されているETFかを解説していきます。
ここまで読んでなお「ひょっとしたら時期が悪いだけで、ナスダックに勝てるかもしれない」と淡い期待を持たれている方を、絶望の淵に落として差し上げましょう。
QYLDのの仕組みを理解するうえで、知っておかなくていけない単語が有ります。それはコール・オプション(以下、コールOPと記)です。
投資の掛け捨て保険『コールOP』
例えば車の免許を持っていると、殆んどの人は自動車保険に入っていますよね。
少額のお金を保険会社に支払う代わりに、事故を起こした時の多額の賠償を、全て保険会社に肩代わりしてもらう契約です。
投資の世界でも、先に少額のお金を支払う代わりに、投資の損失を肩代わりしてもらう、仕組みが有るのです。それがオプションです。
では、画像を使って解説していきましょう。
左の金髪の女性(以下、金髪さん)は、どうしてもA社株を買わないといけないのに、2月1日にならないと、資金を準備できません。
もし、株価が更に上昇してしまえば、購入の為に、無理して資金を調達しなくてはなりませんから、株価の上昇で大きな損失を被る事になってしまいます。
もしもこの時、株価が100万円より上がった分の資金を肩代わりしてくれる、損害保険があったら入りたいと思いますよね。
逆に、右の女性は株価下落の未来を予想をしています。(以下、ミライさん)
全く逆の株価予想をしたことで、二人の利害が一致しました。
金髪さんはオプション・プレミアム(以下、OPプレミアム)と呼ばれる保険料を支払う事で、確実にA社株を手に入れる事が可能になり、
逆にミライさんは、保険料を受け取る事が出来ました。
今の状況を整理すると、こんな感じになります。
- 金髪さん:2月1日にA社株を100万円で買う権利を手に入れた。
- ミライさん:2月1日にA社株を100万円で売る義務を負った。
この状態で2月1日を迎えるとどうなるか、見てみましょう。
株価が80万円に下落したので、金髪さんの持つコールOPの意義は無くなりました。
証券会社で80万円で買えるA社株を、100万円で買おうとする人はいませんからね。
コールOPが無駄になってしまいましたが、金髪さんはA社株を買う事ができて満足しています。
さらに、ミライさんは、株を売る義務は2月1日で消滅し、受取ったOPプレミアムが利益として確定しました。
二人の状況はこんな感じでしょう。
- 金髪さん:コールOPの費用は無駄になったが、A社株を買えて満足。
- ミライさん:受取ったOPプレミアムで小銭を稼げたので満足。
コールOPが使われなければ、誰も不幸になる事はありません。しかし・・・
ミライさんの予想は外れ、株価は200万円まで急騰してしまいました。
しかし、金髪さんはコールOPを持っているので、A社株を100万円で入れることが出来ます。
悲惨なのはミライさん、時価200万円のA社株を100万円で売り渡さないといけないのですから、大損です。
- 金髪さん:コールOPを利用して、A社株を買えたから満足。
- ミライさん:コールOPの義務を果たすために大損・・・
因みに極端な話ですが、株価がもし1億円に成ったとしても、ミライさんは100万円で売り渡す義務が有ります。
コールOPを売るという事は人生を破滅させる可能性が有る危険な取引なんですよ。
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カバードコール戦略の仕組み。
この危険なコールOPの売却で高い配当金を出しているのがQYLDなのですが、ただ単にコールOPを売っているわけではありません。
ちゃんと、株価が上昇しても絶対に破産しない対策が取られています。
それは、コールOPを売るのと同時に、同じだけの量の株式を買い付ける事です。
万が一、株価が急上昇しても、既に保有している株を売り渡せば、コールOPの義務は果たせるのですから、株価急騰で破産することは有りませんね。
しかし、株式を保有する事で、コールOP売りだけの時には無縁だった、株価下落のリスクが加わってしまいました。
もしも、株価が下落したら、下落した分だけ損失を被ることになります。
これが、『コールOP売却と株式の保有を組み合わせた取引』カバードコール戦略と呼ばれている投資手法なのです。
さらに重要なことが有ります。
「QYLDは株価上昇の利益を放棄するETF」と聞いたことは有りませんか?
保有している株式がどれだけ上昇したとしても、それは決められた株価で売り渡す為に保有しているだけなのですから、利益は得られません。
つまり、カバードコール戦略は
- コールOPの売却で小銭を受け取る。
- 保有株の値上がり益は全て放棄する。
- 保有株の値下がり損は損失になる。
『利益は少しだけ、損失は保有株の下落リスク全て』という、なんとも割に合わない投資手法なのです。
そんなカバードコール戦略が、投資の世界で行われている理由は、未来の株価が比較的予想しやすい短期投資において一定の効果があるからにすぎません。
ただ、幸か不幸かナスダックは株価の乱高下が激しく、コールOPが高値で売れるうえ、QYLDが設定されて以降、株価が基本的に右肩上がりなので、カバードコール戦略でも、配当金込の計算でプラスになってしまっています。
しかし、ナスダック右肩上がりなら、普通にナスダックに投資すればいいでしょ?という話ですよ!
カバードコール戦略は本来なら、高配当株投資のように、長期を前提にする投資手法では無いんですね。
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最大のデメリット:QYLDは簡単に下がり、上がり辛い
ここまでカバードコール戦略は利益は少なく、損失が大きい投資方である旨をお伝えしましたが、これに長期投資が加わると、輪をかけて最悪の投資方に成り下がってしまうんですよ。何度でも言いますが
残念ながらQYLDの事です。
期日の度に下落し易く
カバードコール戦略には必ずコールOPを精算する期日が有ります。上の例ですと2月1日の事ですね。
この期日でコールOPが期限切れになるので、新たなコールOPを売り、ナスダックの株を購入するのですが、この期日が訪れる度に、私達が損しやすくなっている事をご存じでしょうか?
カバードコール戦略の特徴は「株価が下落すると、下落分の損失を被る」という解説をしましたが、どこを基準にして下落なのでしょうか。
答えは、期日の株価です。
株価が順調に上昇して期日を迎えると、新たにコールOPを売ります。
それまで保有していた株式は、コールOPの義務に従い、売却していますから、新たに値上がりしたナスダックの株を買わなければなりません。
つまり、期日の株価から下落した分が損失になるのです。
運よく二期連続で上昇したとしても、次の三期目は、再びその上昇した株価を基準にコールOPが売却され、株式が買われます。そして四期目・・・
株価が上昇すればするほど、下落する幅も大きくなるのですから、ナスダックが上がれば上がるほど、QYLDが暴落する可能性が高まっていることになりますね。
QYLDは毎月配当のETFですから、この期日が毎月訪れるのです。
期日の度に上昇しづらく
続いて、ナスダックが下落して期日を迎えた場合も見てみましょう。
期日はコールOPの精算日ですから、新たなコールOPを売却します。そして、前期のコールOPはナスダック下落で株式売却の義務が消失したので、保有していた株式は下落したまま手元に残っていますね。
さて、ここからナスダックが反転上昇したらどうなるでしょうか?
分かりますよね、カバードコール戦略の特徴の一つが、「保有株式の値上がり益は放棄する」ですから、ナスダックがどれだけ上昇したとしても、保有中の株式はコールOPの義務に従って引き渡すだけです。QYLDの株価には何の影響もありません。
一度下がってしまったQYLDが再び上昇するのは、もの凄く難しい事なんです。
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QYLDが上昇する事もある。
それでもQYLDの値動きを見ると、上昇している所も有りますよね。QYLDの株価が上昇する場面は以下の2つです。
- 期日と期日の間で、一度下落した後に上昇した。
- 受取るOPプレミアムが高額だった。
期日の間のQYLDの株価は、保有株の株価とOPプレミアムの変動によって上下します。期日をまたがない限り、損失ラインも利益放棄ラインも変わりませんから、一度下がった後に急上昇する場合もあるでしょう。
更に受取るOPプレミアムが高額だった場合も、QYLDの株価が上昇する可能性があります。
OPプレミアムは投資における掛け捨て保険料ですから、投資家がリスクが高いと不安になるほど、高額のOPプレミアムを受け取る事が出来ます。
大災害が起きた直後なら、少し高い損害保険でも入ろうとする人が増えるのと同じですね。
QYLDはOPプレミアムから毎月の配当金を出していますが、受取ったOPプレミアムには以下のルールがあるため、全額を配当金に回すわけではありません。
- 純資産総額の2%以上⇒純資産総額の1%を分配金に回す。
- 純資産総額の2%未満⇒受取ったOPプレミアムの半分を分配金に回す。
どんなに高額のOPプレミアムを受け取っても、配当金に回す額は最高で純資産総額の1%までですから、残りが多いほど純資産総額が増える、つまりQYLDの株価が上昇することになります。
しかし、ただOPプレミアムだけが増えたところで、前述の通りQYLDには下落し易く、上昇を妨げる特性が有ります。
そのため、QYLDが順調に上昇するのは「ナスダックが大きな値動きを繰り返す、しかし、期日には元の株価に戻っている」という限られた状況が長期に渡り続く場合だけなのです。
値動きが横ばいは、ナスダックの値動きで、最も無さそうな値動きですよね。
これではとても安定した上昇は期待できません。
何度でも言いますが、普通にナスダックに投資すれば良くないですか?いや、ナスダックに投資しましょう!
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QYLDのデメリットを再確認:高利回りに惑わされないで。
今回の記事ではナスダックに投資している様に見えて、年利回り10%越えの安定した高配当を出す事で有名なQYLDについて解説しました。
長々と書きましたが、結論は一つ
「QYLDに投資するのは止めましょう!」
という事です。
その理由は主に4つ。
- 安定しているのは配当金額ではなく利回り。
安定しているのはQYLDの配当利回りであって、配当額ではありません! - そもそもナスダック投資ではない。
QYLDが投資をしているのは、『ナスダックに投資をしている投資家に向けた保険』です。 - ナスダックの投資信託の方が好成績。
ナスダックに投資する投資信託を毎月一部だけ売却した方が、有利な投資ができます。 - QYLDは長期投資と相性が絶望的に悪い。
QYLDは月に一度の期日を迎える度に、下がりやすく上がりにくくなります。
投資信託の定期売却
高配当株投資の目的は、配当金を得る事ではなく、資産が産み出した利益で、日々の生活を豊かにすることです。
銀行口座に現金が振り込まれるのなら、その手段が配当金である必要はありません。
QYLDの年利回り10%超の配当金という魅力的な餌に釣られて、謎のETFを保有するよりも、世界的に有名なナスダックに投資して、そこから利益を少しずつ受け取る方が合理的だとは思いませんか?
幸いなことに楽天証券では、投資信託の定期売却サービスを提供しており、『eMAXIS NASDAQ 100』等の投資信託を買い付けた後、1度だけ定率売却(毎月0.87%)を設定してしまえば、QYLDの平均配当利回り以上の額の現金が毎月振り込まれます。
しかも、基本的に右肩下がりのQYLDと比べ、資産が残る可能性も高いでしょう。
みなさんがQYLDや東証に上場されたETF(2865)の仕組みと特性を理解して、なお保有を継続されるのならば、私がとやかくいう事ではありませんが、ナスダックに投資する高配当ETFと勘違いして投資をしているのなら、速攻で楽天証券&投資信託の一部売却に乗り換えて下さい。
そうしないと、大切な資産を減らし続ける事になってしまいますよ。
投資信託の毎月定率売却が出来るのは楽天証券だけ。
QYLDは魔法のETFじゃありませんよ!
www.katsurao.info
他にも勘違いしたまま、投資を続けているかもしれませんよ。
www.katsurao.info
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