4%ルールの勘違いしやすいポイント。
インデックス投資の出口戦略として、最も有名なのが4%ルールです。
このブログに到達して下さった方なら、4%ルールの事をご存じの方が多いと思いますが、結構、勘違いして情報が拡散されている場合も多いんですよね。
私もサイドFIRE生活を維持していくために、4%ルールに基づいたポートフォリオ構築をしている真っ最中なのですが、早期退職後に誤った認識だったと気づいた点が何点かありました。
そこで今回の記事では、私が4%ルールについて勘違いしていた事、つまり、勘違いされ易いポイントを抜粋しています。
FIREを目指して4%ルールのポートフォリオを構築中の方は、自分の前提条件が覆ってしまうかもしれない重要事項も含まれています。
この記事を読んで、未来の生活破綻を未然に防いでくださいね。
この記事で分かる事。
- 上手くいってもお金は減る。
- 税金や手数料は別計算。
- 株・債券なら何でも良いわけじゃない。
- 取崩し額は定額で。
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通称「トリニティ・スタディ」・4%ルールとは
4%ルールは、1998年に米国のトリニティ大学の教授3名が発表した論文が元になっています。タイトルは
Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable
(訳:老後の貯え:持続可能な引出率の選択)
通称「トリニティ・スタディ」と呼ばれています。
1926年~1995年の期間中に、S&P500と優良社債で資産運用した場合を検証した結果、
「毎年4%づつ取崩すのがベストっぽい!」という話です。
(; ・`д・´)ザックリシスギw
25年分の資産を4%で取り崩せば、25年で枯渇してしまいそうですが、取り崩し期間中も資産運用を継続するので、かなりの高確率で資産運用が成功し、25年を超えても人生安泰という事ですね。
とはいえ、情報を受取るのは、私達のような一般市民ですので、色々と勘違いして解釈してしまう事が多いんですよ。
通称「4%ルール」の勘違いポイント
それでは、私が勘違いしていた、5つのポイントを紹介しましょう。皆さんにも当てはまるかもしれませんよ。
①「成功すれば資産が減らない」は誤りです。
下の表は「トリニティ・スタディ」に掲載された一覧表です。
1926年~1995年の間に、資産の一定額を取り崩していった場合、最後まで資産が残っているかを検証したものですね。
左側が資産の保有比率(株-Stocks 債券-Bonds)と運用年数、上側の%が取り崩し割合ですね。
さて、下の表中に98という数字(表の〇)が書かれてますが、これはどの様な意味なのでしょうか。4択問題です。
- 平均値で資産の98%が残っている。
- 中央値で資産の98%が残っている。
- 98%のケースで資産が減っていない。
- 98%のケースで資産が0になっていないw
正解は4の『資産が0になっていない』でした。ちなみに私は3の「98%のケースで資産が減っていない」だと、思っていましたよ・・・(泣)
表中の数字は成功ケースの割合(%)なのですが、その成功条件は論文中に記述が有りました。
The portfolio success rate in the study is the percentage of all past payout periods supported by the portfolio (where the ending value exceeds $0).
簡単に和訳すると、「成功とは、最後に0ドルを超える資産が有った場合」・・・
つまり、30年後に資産が10円だけ残っていても、『成功!』という訳ですね。
♫ヽ(゜∇゜ヽ)♪ オメデトー???
資産が減らないと勘違いしていた方は、人生プランの再検討が必要ですね。
②税金と手数料は考慮されていません。
「トリニティ・スタディ」の検証には、税金や手数料の事は考慮されていません。
論文中にも、このような但し書きがあります。
The study did not adjust for taxes or transaction costs.
(訳:この調査では、税金や取引コストを調整していません。)
株や債券の売却益、配当金に掛かる税金や、投資先に支払う信託報酬は避けられません。
悪い言い方をすれば、あくまで「机上の数値」という事です。
「4%ならギリギリ生活できる」と考えて、FIRE計画を立てている方は、計画の修正が必要になるでしょう。
とはいえ、税金や手数料が考慮されていないのも、悪い事ばかりではありません。
日本と米国では税金の仕組みが違いますし、手数料なんてコロコロ変わります。
中途半端にコストを計算した数値なんぞを出されても、混乱するだけです。
まったく考慮されていないからこそ、「自分自身でコストを考慮した数値を導き出し易い」とも言えますよ。
③株と債券の投資先を間違えてませんか?
「トリニティ・スタディ」の論文中には
Stocks are represented by Standard and Poor’s 500 index, and bonds are represented by long-term, high-grade corporates.
(訳:株はS&P500指数 、債券は長期高格付け社債)
と記述されています。
自分で選別した個別株や高配当株に投資して、4%ルールを実行しているつもりの方はいませんか?
私もHDVやSPYDで4%ルールを実行しようとしていた時期が有りましたw
L ( ̄▽ ̄)」オテアゲダゼ
債券についても、有名な米国ETFのBNDやAGGは半分が米国国債ですので、変動率は小さいですが、利回りで劣ります。
高格付け社債に投資しているLQDやUSIGが検証に近いETFでしょう。
株と債券の保有比率だけを気にして、ナンチャッテ4%ポートフォリオになってしまっている方は、投資先の見直しが必要かもしれません。
こんな記事も書いています。↓↓↓www.katsurao.info
④取り崩しは定率ではなく定額です
「トリニティ・スタディ」の4%ルールは定額で取り崩すことを前提にしています。
論文中にも
the annual dollar withdrawals are based on a first-year withdrawal rate.
(訳:年間引き出し額は、初年度の引き出し額を元にしている。)
4%ルールと呼ばれるものは「トリニティ・スタディ」だけではなく、いくつか種類が有ります。
取り崩しの度に、現資産の4%を取り崩す定率売却を推奨している場合も有るので、ごちゃ混ぜになってしまう場合もあるでしょう。
確かに、定率売却の方が、資産が暴落した時に、取り崩し額を減らせるので、資産が長持ちしそうですが、反対に株価が上昇した時に、必要も無いのに多額の資産を取り崩しますから、一長一短です。
更に、生活費に充てるなら、取り崩し額は一定であるべきでしょう。
「トリニティ・スタディ」を信じて4%ルールを始めるなら、前提条件を崩さず、定額で取り崩す方が賢明でしょうね。
⑤同じ額を取る崩せても、生活は安泰じゃありません。
物価という物は変動するものなので、インフレを考慮した一覧表も掲載されています。
成功率は高いとはいえ、4%でも、100を切るケースが若干増えていますね。
定額で取り崩していても、物価の上昇で生活費が足りなくなってしまったら、意味がありません。
いかにデフレが続く日本とはいえ、30年後に物価が上昇していない可能性は低いでしょう。
インフレの続くアメリカのデータではありますが、こちらの表の方が現実に近いデータと言えるかもしれません。
4%で生活費をギリギリ賄う程度の額を取り崩すプランでは、家計が破綻する可能性が高まります。
別に余裕資金や収入源を確保する事が必要になりそうですね。
4%ルールの大前提を壊さないように
4%ルールで勘違いされやすいポイントを5つ紹介しました、「4%ずつ取り崩せば、何でもOK」とはいかないようです。
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4%ルールは一般市民の味方
「資産が0円でなければ成功」という、甘々の基準には???と思いますが、「トリニティ・スタディ」の取り崩し方が、私達のような一般市民にとって、大変有効であるという考えに変わりはありません。
下のグラフは、1,000ドルで取り崩しを始めた場合の、最終保有資産額の一覧です。
赤丸の『75% Stocks/25% Bonds 30years』に注目して下さい。
4%ルールを30年続ければ、大丈夫そう
- Average(平均):$9,031
- Minimum(最少):$1,497
- Median(中央値):$8,515
- Maximum(最大):$16,893
インフレ調整の無いデータですが、1,000ドルで4%ルールを始めた場合の資産額ですよ。
30年後に、減るどころか、全てのケースで増えていますねw
驚くのは、中央値で約8.5倍になっている事です。決して幸運に恵まれた一定期間だけの数値じゃないんです。
もちろん、インフレを考慮していない数値なので、現実はもっと厳しいものになるでしょうが、有効な資産運用の出口戦略であることに変わりありません。
4%ルールを忠実に実行すれば、老後の生活破綻を防ぐ事が出来ます。「老後が不安だから貯めるだけ貯める」では人生が楽しくありません。
ある程度の資産が貯まったら、貯蓄資金の一部を娯楽に回して、毎日の生活を楽しむのも良いんじゃないでしょうか。
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